この記事は約 6 分で読めます。

【人工授精(AIH)を考えている方に】知っておきたい人工授精のあれこれ。

人工授精とは、排卵に合わせて洗浄濃縮した精液を子宮内に排卵前日~当日の間に注入する方法です。

タイミング法(医師の指導の下、排卵時に合わせて性交を行う方法)や、自己注入法(針無の使い捨て注射器で、医師の指導の下、
排卵時に膣の中に精子を注入する方法)との違いは、精子が女性の体内に入る位置に違いがあります。
タイミング法などの場合は、膣のなかに通常精子が入ります。しかし、人工授精では、さらにその奥の子宮に直接精子を注入することができるので、精子の移動距離を短くすることによって受精率を上昇させることができます。

妊娠率は?

一般に、不妊状態のカップルが人工授精を行った場合の妊娠率は、5~10%といわれています。自然妊娠、タイミング法の妊娠率は、2~3%といわれているので、それと比較するとやや妊娠率が上がる方法です。
また、男性の精液の状態が良い方が妊娠率は高くなります。精子の質を高めるために推奨される禁欲期間は1週間以内程度が推奨されています。

対象となるのはどんな時?

・フーナーテスト(性交後試験)を何度か実施して、良い結果が得られない場合

フーナーテストを何度か行っても良い結果が得られない場合、卵子と精子が出会えておらず受精そのものが、体内できちんと起こっていないという可能性があるため、人工授精の適応となります。フーナーテストは、タイミング法実施24時間以内に実施する検査です。子宮腔から経管粘液を採取し、スライドガラスにのせて、頸管粘液の量や、粘度、頸管粘液中の運動精子の数を評価します。

これをみることで、卵管膨大部(受精が起こる部分)まで精子が到達しているかどうか、排卵のタイミングが合っているどうかを確認することができます。例えば、排卵のタイミングが合っていないと十分な経管粘液が採取できませんし、精子などに問題がある場合、十分な運動精子を確認することができません。

・精液検査の結果があまり良くない場合

精液検査を実施し、WHOが発表している基準と検査結果を比較し、精子数が平均を下回る場合、運動率がやや低い場合は、人工授精の適応となります。精液検査は 精液の液量や、精子の総数、運動率、奇形率などを見ていく検査です。フーナーテストでは、頸管粘液内の精液を見ていくため、頸管粘液量が十分でない場合、精液に問題が無くても精子の状態があまりよくないといった場合もあるため、男性側の現状を把握するといった意味合いで、検査を実施することもあります。

やや精子側に問題があった場合、人工授精は、洗浄濃縮後の精子を子宮の中に注入することで、運動前進する良好な精子の移動距離を縮めることができるので有効とされています。

・タイミング法を何度か実施しても妊娠できない場合

初歩的な検査では、問題が見られず、タイミング法を実施したけれど、妊娠につながらなかった時、ステップアップした治療方法、妊娠率の上がる方法として人工授精が提案されます。

・夫婦生活がなかなかもてない場合

多忙のため時間が取ることが不可能、心理的な問題、男性側の問題などで、タイミングをとるのが困難な場合も、人工授精が治療方法としてすすめられる場合があります。

大抵の場合、家で3~5時間前に採取した精子を治療に用いることが可能であるため、多忙方であっても受精を実施するチャンスが増えます。また、男性側が家での精液採取が困難なほど多忙、海外への長期の出張が多いなどの場合、凍結した精子を用いることができる為、実施する場合もあります。ただし、凍結した精子を用いる時、たいていの場合、運動良好な精子の数が減少してしまうといわれています。

人工授精は、運動良好な精子数が多い方が妊娠率としては上昇するため、凍結精子を使用予定であっても、可能であれば新鮮精子を使用することを推奨する施設が多いです。(施設によっては、院内での採取のみしか取り扱っていない。など、状況は異なります。)

人工授精の治療の流れは?

<プランの決定・ホルモン管理>

治療を希望する周期の生理が開始したら、5日目程度を目安に病院を受診します。採血を行い、ホルモンの状況をしらべ、その周期のプラン(薬剤を使用するかどうかなど)を決定していきます。低温期の終盤(排卵日の2日程度前)、排卵を促すホルモンをコントロールする薬剤を使用します。排卵のしにくさによって、点鼻薬、もしくは筋肉注射が施されます。

通院回数の目安は、その方の周期は安定しているかどうかによっても異なりますが、多くの場合低温期の通院は2~3回程度です。

<人工授精の実施>

排卵日前後に人工授精の実施となります。
実施当日、自宅または病院(専用の部屋があれば可能)で採取した精液を病院に提出します。提出された精液は、死滅した精子や運動していない精子を取り除き、運動良好な精子のみを回収するための洗浄濃縮処理が行われます。精液の処理終了後、人工授精の実施となります。人工授精は内診台で実施され、実施自体は5分程度と短時間です。痛みもほとんどありません。

感染症予防のための抗生物質が処方され、その日の処置は終了です。
また、タイミング法と人工授精法を併用しての治療を行う場合もあります。その場合の性交のタイミングについては医師の指示があります。

<人工授精後>

排卵が確認できているようであれば人工授精後当日に黄体ホルモン補充薬の処方。
排卵が確認できていないようであれば、一週間後程度あたりに来院し、エコーで排卵の確認を行い、黄体ホルモン補充薬の処方となります。

<着床・妊娠の確認>

人工実施後、2週間程度しても次の生理周期が開始しなかった場合、着床の可能性があります。来院し、尿検査、エコー検査などで確認を行います。着床が確認できた場合は、黄体ホルモン補充薬の追加の処方が行われます。6週間程度まで様子を見て、胎嚢、胎児の心拍が確認できると、妊娠が確認できたということで産科のある病院への転院となります。

費用は?

1回あたり、2~5万円程度が平均となっています。
人工授精は、補助金対象外である場合がほとんどです。補助金を受けての不妊治療を考えている場合は注意が必要です。

治療を受けるには?

人工授精を実施している(不妊治療専門ではない)婦人科のクリニックもあります。その場合、受診している婦人科でそのまま治療を受けることも可能です。また、不妊治療専門のクリニックでの治療を受けることも可能です。初診で不妊治療を受けることも可能ですし、すでに婦人科を受診している場合は、紹介状による希望のクリニックへの転院を実施しても良いでしょう。

治療のリスクは?

多胎率(双子以上になる確率)、流産率、子宮外妊娠率、先天性異常率は自然妊娠と同じ程度です。リスクとしては、ほぼ、影響がないとされていますが、細菌感染等のリスクが挙げられます。精子は洗浄されていますが、精子が死滅してしまうため、滅菌処理などは施されていません。これを子宮の奥に注入することなどが原因として挙げられています。

人工授精の回数が、6回以上を超えると妊娠率と感染症発症率が逆転するとも言われていますが、感染症を防ぐための抗生物質の処方などもあるため、可能性としては極めて低いものとされています。

終わりに

不妊治療専門の病院を受診すると最初に、血液検査や通水検査、卵管造影検査、精液検査など、いくつか初歩的な検査が行われます。その結果をもとに、治療方法を選択していきます。その課程で人工授精が治療方法として選択される場合も多くあります。

一方で、卵管造影検査や通水検査で卵管のつまりが発見された場合や、精液検査で極端に精液中の運動している精子がとても少ない、または全くいない、すべて死滅しているといった場合は、人工授精ではなく、一つステップアップした治療方法である、体外受精や顕微授精が治療法として推奨される場合もあります。

もしくは、初歩的な検査で問題が見つかった場合、女性側の要因、男性側の要因(原因には治療には男性不妊の病院を受診する必要があります)であっても治療によって改善がみられ、人工授精を実施可能になる場合もあります。どちらを優先すべきかについて悩んだ場合は、女性側の年齢的な問題、治療にかかる費用や期間等を確認して、ステップアップを優先すべきか、その他疾患へのアプローチを行うべきかを医師と相談して、治療をすすめるのがよいでしょう。

【こんな記事も書いています】

知っておきたい体外受精のあれこれ。

妊活・不妊治療の知識関連キーワードから探す

【人工授精(AIH)を考えている方に】知っておきたい人工授精のあれこれ。へコメントをする

※メールアドレスは公開されません。